安定した廃水処理を行う為に必要なプロセスについて

前回はバッチ式と連続式のメリット・デメリットについて少しお話しさせて頂きました。
 今回は、それを踏まえた上で安定した廃水処理を行う為に、どのような点に留意すれば良いかを少しお話しさせて頂きます。

 

①廃水発生量、流入量の把握

廃水はお客様の製造工程により発生する場合が多く、その量は製造量や製造スケジュールによって大きく影響されます。

 

お客様とのヒヤリングの中で『廃水量ってどのくらいですか?』の質問に対して『日によってバラバラだから分からないんだよね』との回答を頂く事がたびたびあります。

バッチ式廃水処理の場合、多くても少なくても一度に処理する量は常に同じなので、それ程影響はありませんが、連続式廃水処理の場合、流入量はしっかりと把握しておく必要があります。

方法として原水から反応槽へ汲み上げを行っている、ポンプの供給量を測定すれば、時間辺りの流入量は凡そ掴めます。

ポンプのスペックだけでは、揚程やSSの濃度によって実際の供給量と大きく異なる場合があります。

実際の流入口から採水出来るようであれば、そこで測定を行った方より正確な流入量を把握する事が出来ます。

このような測定を実施し、想定していた流入量と結果が大きく違い凝集剤の薬注量が大幅に見直され処理が安定した現場がいくつもありました。

また、アワメーターを付けてポンプの運転時間を測定すれば、1日の廃水処理量の凡そを把握する事も出来ます。

1日辺りの廃水発生量や廃水処理量を把握する事によって、廃水処理にかかっているランニングコストを把握する事にも繋がります。

廃水処理コストの見直しや会社全体の費用の試算等にも非常に役立ちます。




②原水の懸濁物質(SS)濃度変化の把握と調整

 次のポイントとして、原水のSS濃度の実態を把握する事があります。

 

 これは、バッチ式でも連続式でも全く同じ事ですが、日によって、あるいは一定時間、またバッチ毎に、凝集が上手く行ったり行かなかったりする事はありませんか?

 『いつも薬品は同じ量しか入れてないのになんで?』



と、思う事があるかと思います。



おそらくそれは、原水のSS濃度の変化が大きく影響しております。

廃水の種類にもよりますが、製造工程や製造内容によってSS濃度が変化する事が多々あります。

濃度が変化すれば凝集剤の添加量もそれに合わせて変える必要があります。



 『でも、その度に薬剤の添加量を調整するのは大変。。。』

前回のお話しでもバッチ式の場合は、メリットとして添加量を調整しやすいとお話しさせて頂きました。

連続式の場合は、どのタイミングで薬剤を調整するのか、いつ水質が変化するのか?把握するのは至難の業です。

また把握したところで、だれが、どれだけ調整したら良いのか?これまた至難の業です。

このような場合の対処法として、

(1)調整槽を設ける(原水槽を大きく設ける)

 仮に、1日1tの廃水が発生し、1日1t廃水処理を行っているとすると、原水槽が1tしかなければ、毎回濃度が違う廃水に対応しなければいけません。

 

 しかし、原水槽を10tに増やすと約10日分の廃水を溜める事ができ、10日間の日々の原水濃度の変化はすべて調整され毎回安定した処理を行う事が出来ます。

 どのくらいの大きさの槽を設けるかは、水質変化のタイミングや実態を予め把握しておく必要がありますが、ここをきっちり掴めれば安定した処理を行う事が出来るかと思います。

 また、調整槽では攪拌機を設けて濃度が常に均一になるように調整する必要があります。

 

(2)原水のSS濃度の最大値を把握する。

連続式廃水処理の場合、調整槽を設けてもどうしても水質が変化する事があります。

 

その場合は、SS濃度が最も高いところでの最適な薬剤添加量を把握し、その高い値で連続運転を行うしかないかと思います。

この方法は、SS濃度が低い場合、薬剤が過添加になる可能性がありますし、リスクはあります。

しかし、どうしても凝集不良を起こせない場合はこの方法を取ります。




(3)処理水監視槽を設ける

凝集処理後の処理水を直接放流するのではなく、その手前で処理水監視槽を設けます。

 

そこにSS計等を設置し、一定の濃度を超えた場合に原水タンクへ返送するというフローにします。

これによって、凝集不良を起こしている処理水を放流する事を防ぐことが出来ます。

しかし、再処理となるので時間や処理量、コストの増大に繋がるので対策と言うよりは保全の役割です。




③一剤型凝集剤の活用

 複数薬剤を使用している場合、SS濃度が変化した時にどの薬剤を調整すれば良いのでしょうか?
 
『一剤目のPACだけ増やせばいいんでしょ?』

それで解決する事もありますが大抵の場合、凝集のバランスやpHのバランスが崩れるので全薬剤を見直す必要があります。

そのような時、一剤型凝集剤は調整が『増やすか?減らすか?』だけで調整が非常に楽です。

このように薬剤を調整する必要がある前提で考えた時に、一剤型凝集剤は調整が非常に楽なので現場の作業時間は大幅に短縮されます。

安定した廃水処理を行う為の留意点を長々とお話しさせて頂きました。

大切な事は自社で排出している廃水の性質や発生状況を詳細に把握する事かと思います。

 廃水処理工程は生産に直結する箇所では無いので、あまり注力しない部分ではあるかと思いますが、実態を把握する事で、思わぬ改善や、コストダウンに繋がる場合も多々あります。

 廃水処理の困ったは是非、弊社までお気軽にご相談下さい。

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